コラム

Column

音羽山部屋

相撲の街・両国には、長い歴史を持つ相撲部屋が数多く存在する。その一方で、新たな歴史を築き始めた部屋もある。この地にほど近い場所で音羽山部屋を率いるのが、元横綱・鶴竜力三郎、音羽山親方だ。

横綱として頂点を極めた親方は今、何を思い部屋を運営しているのか話を伺った。

音羽山親方は、16歳でモンゴルから来日して以来、相撲一筋の人生を歩んできた。

言葉も文化も異なる異国の地での生活は決して容易なものではなかったが、相撲部屋での日々が自分を育ててくれたのだという。相撲のおかげで今の自分があり、力士としての技術だけでなく、人としての在り方や日本で生きていくための常識もすべて部屋で学んだと振り返る。その経験は、親方の中で今も変わらぬ原点となっている。

だからこそ、自らが師匠となった今、その思いは自然と弟子たちへと向けられている。「自分を育ててくれた相撲に恩返しがしたい」親方は静かにそう語った。その恩返しとは、次の世代を育て、相撲の未来へとつないでいくことである。

音羽山部屋は創設からまだ年月の浅い部屋ではあるが、すでに着実な歩みを見せている。関取を育て、先場所では優勝力士も輩出した。弟子たちが結果を出してくれることが何よりのやりがいであると親方は語る。土俵に立っていた頃とは異なる形ではあるが、弟子の成長を見守る日々の中に、師匠としての喜びがある。

もっとも、親方自身は現在の部屋の状況を、まだ土台を築いている段階であると位置づけている。強い力士を育てることはもちろんだが、それと同時に、人としてしっかりと成長できる環境を作ることが重要であると語る。相撲の強さは日々の稽古の積み重ねによって培われるが、それを支えるのは生活の中で身につく礼儀や責任感である。自身がそうであったように、部屋での経験そのものが力士の人生を形作っていくと考えている。

一方で、長い歴史を持つ相撲界については、守るべき伝統と見直すべき部分の両方があると語る。相撲には受け継がれてきた大切な文化があり、それはこれからも守っていかなければならない。しかしその一方で、自身が現役時代に感じた理不尽さや、意味を見出せなかった慣習については、これからの時代に合わせて改善していきたいという思いもある。伝統を守ることと、より良い環境を整えること。その両立こそが、これからの相撲部屋に求められる姿であると考えている。

取材の終わり際、親方はこれから入門する新人を指導しながら、育成において何よりも大切なのは基礎であると語った。最初に変な癖をつけず、基本をしっかりと身につけることが重要であると教えてくれた。

間違った癖がついてしまうと、それを修正するのに長い時間を必要とすることになる。

限られた時間の中でそれらに時間を費やすことはその後の力士人生を大きく左右するとことになってしまうのだ。

その言葉には、自身が長い年月をかけて築き上げてきた経験と、これからを担う力士たちへの真摯な思いが込められていた。

両国という相撲の中心地に根を下ろし、新たな歴史を刻み始めた音羽山部屋。横綱として頂点を極めた一人の力士は今、師匠として未来を見据えている。その歩みは、自らを育ててくれた相撲への恩返しであり、次の時代へと続く新たな礎を築く挑戦でもある。

第一ホテル両国
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